FP技能検定の実技試験は、実施団体によって選び方が変わります。日本FP協会は科目が1つなので選ぶ必要がなく、金融財政事情研究会(きんざい)は複数の科目から1つを選びます。学科試験は両団体で共通なので、迷うのは実技の科目だけです。この記事では、各科目が公式にどんな顧客と相談内容を想定しているかを並べ、どれを選ぶかの基準を整理します。どの科目が易しいか・難しいかという優劣はつけません(科目ごとに想定する場面が違い、横並びで比べられないためです)。
団体そのものをどちらにするかは、別の記事きんざいとFP協会、どっちで受けるかで扱っています。ここは、きんざいを選んだあとの科目選びが中心です。
科目に共通する実技の試験範囲
先に、科目で変わらない部分を押さえます。実技の試験範囲は、両団体とも学科と同じ6分野です。きんざいのQ&Aは「学科試験・実技試験や級を問わず、ライフプランニングと資金計画、リスク管理、金融資産運用、タックスプランニング、不動産、相続・事業承継の6分野から出題が行われます」と明記しています。科目別の要綱でも、各科目に「学科試験の試験範囲(A〜F)について、下記の項目を審査」と同じ範囲が置かれ、保険(リスク管理)はどの科目でも試験範囲に含まれます。
つまり、どの科目を選んでも、試験範囲そのものは変わりません。科目で違うのは、公式が各科目の審査で想定する**顧客と相談内容(設例)**のほうです。以下はその設例を並べたものです。
協会の実技科目
日本FP協会の実技は「資産設計提案業務」の1科目だけで、2級・3級ともこれに固定されています。6分野を横断して、顧客の状況を分析し提案する1つの業務として問う形で、2級ではプランの検討・作成と提示まで含みます。
したがって、協会を選んだ時点で科目選びは終わりです。「どの科目にするか」で迷う余地があるのは、実質きんざいのほうです。
きんざいの科目別の想定顧客・相談内容
きんざいの実技は、2級が4科目、3級が2科目です。公式の「試験科目及びその範囲」から、各科目が設例で想定する顧客と相談内容を並べます。
2級
| 科目 | 設例で想定する顧客・相談内容 |
|---|---|
| 個人資産相談業務 | 金融資産選択、不動産の有効活用、相続・贈与、ライフプランの策定、年金プランの策定、所得税・住民税 など |
| 中小事業主資産相談業務 | 資産運用、税務、事業承継、事業経営、M&A、組織再編、事業主・事業体のリスク など |
| 生保顧客資産相談業務 | 金融商品としての生保商品、法人顧客の保険経理、年金プランの策定、相続・贈与、税務 など |
| 損保顧客資産相談業務 | ライフプランの策定、法人の損保加入、相続・贈与、年金プランの策定、税務 など |
3級
| 科目 | 設例で想定する顧客・相談内容 |
|---|---|
| 個人資産相談業務 | ライフプランの策定、金融資産選択、不動産の有効活用、相続・贈与税、所得税 など |
| 保険顧客資産相談業務 | ライフプランの策定、保険商品の活用、相続・贈与、所得税 など |
設例の中心はどこか
科目名は業務名だけで、想定する場面までは示しません。設例を並べると、どの顧客とどんな相談を中心に据えるかが科目で分かれます。
個人資産相談業務(2級・3級)は、個人顧客の金融・不動産・税・相続・年金が設例の中心です。保険の相談は設例の中心には置かれていません。ただし前述のとおり、試験範囲の6分野にはリスク管理が含まれるので、保険が出題されないという意味ではありません。
生保顧客資産相談業務・損保顧客資産相談業務(2級)と保険顧客資産相談業務(3級)は、保険の相談が設例の中心に来ます。公式の記述は生保顧客が「生保商品をはじめとする保険商品」、損保顧客が「損保商品をはじめとする保険商品」で、生命保険・損害保険をそれぞれ中心に据えますが、その保険だけしか扱わないという書き方ではありません。
中小事業主資産相談業務(2級)は、想定する顧客が個人ではなく中小事業経営者で、事業承継やM&A、事業体のリスクまで設例に入ります。
どれを選ぶか
きんざいのQ&Aは、実務で相談する相手と内容から科目を案内しています。この外形的な条件がそのまま選ぶ基準になります。
- 3級では、保険会社勤務など保険の相談に応じることが多いなら保険顧客資産相談業務。それ以外の人は個人資産相談業務が案内されています
- 2級で、主に個人の顧客を相談相手にするなら個人資産相談業務。主に中小事業経営者が相手なら中小事業主資産相談業務
- 2級で、生命保険の相談が多いなら生保顧客資産相談業務、損害保険の相談が多いなら損保顧客資産相談業務。勤務先の取り扱う保険で分かれます
- 相談相手が特に決まっていないなら、個人資産相談業務が無難です。想定顧客が個人一般で、外形的な条件が最も当てはまりやすい科目になります
協会を選ぶ場合は科目が1つなので、団体を協会に決めた時点で資産設計提案業務に決まり、科目を比べる工程は発生しません。
学科と合格証書
学科試験は2級・3級とも両団体で同じ問題です。ここまで見てきた科目の違いは、すべて実技だけの話で、どの科目を選んでも手前で解く学科は変わりません。
実技の科目は、合格証書に選択した業務名として記載されます(複数科目に合格すれば、証書も業務名ごとに複数枚)。実務で相談する分野に寄せて選んでおくと、証書に載る業務名も担当分野と揃います。